月のしずく　★★★★
浅田次郎/文藝春秋 (Story) 十五夜の晩、長年コンビナートで荷役をし、酒を飲むだけが楽しみのひとり暮らしの男の元に、転がり込んできた美しい女性。 出会うこともないふたりは、やがて共同生活をするのだが．．表題「月のしずく」他５篇を収録した浅田ワールドあふれる短編集。 (Review) ６篇どの作品も浅田さんの人柄があふれる作品ばかりでした。 読んだ後、心に沁みるというか、ほんのりと暖かさがある、 だから浅田さんは好き。読んだ後、心を癒してくれます。 本作も然り、中でも好きなのは表題の「月のしずく」です。 浅田さんが描く主人公は生き方が不器用で脚光に浴びない人ばかり。 生き方は不器用だけど、人々が忘れかけている義理や人情、優しさがあふれていて、 そんな彼らからいっぱい教えられることがあります。 「俺ァ、蟻ン子です」という主人公の言葉が身に沁みます。 ひょんなことから出会い、共同生活するようになった女性が好きになってしまう。 しかし、彼女には不倫相手の子供を身ごもり、そのお腹の子供を降ろそうとする。 でも彼は「蟻ン子は蟻の子にさせねえです。だから、殺さないでください」と。 命を軽んじている現代に「命の大切さ」を考えさせてくれました。