下流の宴　　　★★★★

林　真理子/毎日新聞社　　 (Story) 由美子、４７歳。サラリーマンの夫と娘、息子と暮らす主婦。 普通の、中流の暮らしをしていけると思っていたのに、息子が学校を辞めてフリーターになってから下に落ちて行く気がした。 普通に暮らし、普通に生きていったのに、何故？ (Review) 林氏といえば、バブリーな題材のエッセイ、バブリーな主人公の小説が多いです。 しかし、バブリーな人間が下流の世界に踏み入れそうになったら、いや、なりつつあったら・・ 主人公はバブリー世代の中流の主婦・由美子、 気位の高い娘に覇気のないフリーターの息子、 朝ドラのような息子の恋人。 息子が結婚したいと言い出した。由美子はふたりの結婚に反対し、 自分の家系が医者であることを自慢し、息子の恋人の家庭を軽蔑してしまう。 このまま彼女は引き下がるかと思ったら、 「医者って偉いですか？だったら、私、医者になります」 誰もが彼女が医大に受かることは不可能かと思っていたのに、 実現してしまうですよ。 これぞ林流”ドラゴン桜! さあ、ふたりは幸せまっしぐらかと思ったら、息子は別れを切り出してしまう。 下流へと突き落とされた由美子は、しょぼくれているかと思いきや、 娘の孫に目をつけてしまい・・ そうまた同じことが繰り返される予感・・人間って反省できない、学習できない生き物だなと。 普通に生活したいのに、息子に幸せになってもらいたいのに 自分の価値観しか押し付けることが出来ず、 なぜ歯車が狂っているかわからない主婦の心理は読みごたえがありました。 さすが林氏、バブリーな女の心理描写は定評があります。